防犯メモランダム

防犯設備士による、毎日を安全に過ごすためのメモランダム=覚え書き

排除されるのはゴミか、ヒトか。割れ窓理論の活用法を批判から考える

割れた窓

犯罪学でおなじみの割れ窓理論

  1. 割れた窓(管理が行き届いていない箇所)が放置される
  2. 住民や行政の関心がない場所として認識される
  3. 不品行の温床になり、犯罪が増加する

このような論理に基づき、ハーバード大学教授のケリングとウィルソンが提唱した理論です。現在は日本でも犯罪や非行防止のために多くの場で活用されています。

しかしこの理論は、無秩序の芽を摘むという性質上、手厳しく批判され続けてきました。

「恣意的に好ましくないとして、モノやヒトを排除できてしまう」

批判の多くは、権力の暴走や不寛容社会の到来を危惧したものでした。

 

はたして割れ窓理論は、差別と不寛容を強いる危険な理論なのか?

批判の歴史を通して、割れ窓理論の活用について考えていきます。

ニューアーク徒歩パトロール実験と割れ窓理論の誕生

無秩序が住民に与える恐怖

時は1960年代アメリカ。重大犯罪が政治的な関心事となっていた時代に、ある社会学者たちは地域コミュニティの犯罪不安について研究していました。

研究の結果、地域の無秩序が住民の犯罪不安を増加させていることが判明。住民は重大犯罪よりも身近にある無秩序への対策を望んでいることが浮き彫りとなったのです。

攻撃的な物乞いや酩酊者、売春による路上での性行為がはびこる地域。おびえた住民は外出を控え、転居し、街は荒れ果てていきます。結果として、経済活動さえ低迷してしまいます。

しかし当時の警察は、殺人や強盗のような重大犯罪ばかりに気を取られ、地域住民のニーズに答えようとはしませんでした。

 

ニューアーク徒歩パトロール実験

1970年代、ケリングはニュージャージー州ニューアークにて徒歩パトロールをする警察官に同行して実情を掴もうとします。

そこで行われていたのは、警察官と住民による密接な相談。どんな行為を取り締まってほしいのか、どの場所を重点的にパトロールしてほしいのかを住民との相談で決めていたのです。

当時は自動車によるパトロールが主流でした。徒歩パトロールは非効率的とみなされていただけでなく、警察官が人々の些細な不安を解決することは畑違いであると批判する警察幹部も多かったといいます。

しかし徒歩パトロールは地域住民の不安を確かに減少させるということが、この実験により判明しました。

 

割れ窓理論の誕生

1982年、ケリングとウィルソンはある論文を発表します。後に「割れ窓論文」として知られるこの論文は、ニューアーク徒歩パトロール実験を踏まえたものでした。

論文内では、無秩序がどのように治安悪化へ繋がるかについて以下のように述べられています。

一部の土地建物が放置され、雑草が茂り、窓が割られる。大人たちは騒ぐ子供を叱らなくなる。子供たちは図に乗ってさらに騒がしくなる。家族は転出し、身寄りのない大人が転入してくる。ティーンエイジャーが街角の商店街にたむろする。商店主がどくように頼んでも反抗する。喧嘩がおきる。ゴミが山積みになる。人々は商店の前で酒を飲むようになる。そのうちに酔っ払いが歩道に座り込み、眠って酔いをさますまで放置される。通行人に物乞いがまとわりつく。
引用:G.L.ケリング・C.M.コールズ著 小宮信夫訳 「割れ窓理論による犯罪防止」 文化書房博文社

無秩序が見過ごされる社会はさらに危険な無秩序を呼ぶ。割られた窓を放置するという些細な無関心によって治安が悪化するということが、たとえ話を用いて解説されています。

この文章の後に、既に荒れてしまった地域は犯罪にも無関心であると知らせることで犯罪者を呼び込むという論理へ続きます。

しかしこの論文発表時には、まだ無秩序と重大犯罪の因果関係は実証されていません。あくまで無秩序と人々の不安に因果関係があるという、ニューアーク徒歩パトロール実験で得られた事実をもとに作られた仮説にとどまります。

無秩序と重大犯罪の因果関係が実証されるまでには、8年の期間を要しました。

1990年、ノースウェスタン大学政治学教授のウェスリー・スコーガンによる「無秩序と衰退、アメリカの近隣都市における犯罪と崩壊の連鎖」という著作のなかでようやく無秩序は犯罪の芽であることが明らかとなったのです。

こうして割れ窓理論は、地域コミュニティーの不安軽減や犯罪抑止の施策に活用されるようになります。

 

ただし、この理論はすんなりと人々に受け入れられた訳ではありません。

秩序を守るために無秩序を作り出すものを排除する。これは人の自由を失わせるものではないかとの批判が相次ぎました。

割れた窓は、あくまで無秩序の例の1つです。ゴミの散乱や落書きが「割れ窓」にあたると考えられる場合もあります。

論争を巻き起こしたのは、人の存在が「割れ窓」に当たるケースです。

ホームレスの人々は掃討されてしまうのか?酔った状態で街を歩くのは罪なのか?

割れ窓理論は多数派の専制を推し進めるための危険な考えである」と反対する人々が次々に現れました。

割れ窓理論への2つの批判

①社会的弱者の徹底排除

秩序を乱す者としてホームレスを取り締まることは正しいのか。彼らは寒さから逃れるために地下鉄のホームで横になる。地下鉄から追い出したら、彼らはどこへ行けばいいのか?

これは、アメリカの人権活動家らによる割れ窓理論への批判です。

彼らは、割れ窓理論は自分たちと異なる人を排除し、差別的な施策を推し進めるものと非難しました。

社会を整理整頓しようとする施策は、社会的弱者を追い詰めてしまうことになる。彼らの主張はおおむねこのように要約できます。

無秩序を重大犯罪と結びつける割れ窓理論は、逸脱せざるを得ない人々の権利を主張する立場とは対立する運命だったのかもしれません。

②容赦のないゼロ・トレランス

割れ窓理論に基づく警察活動は、些細な秩序違反に対しても容赦なく対応するゼロ・トレランス(不寛容)であり、狂信的・独善的なものであるという批判。

よく引き合いに出されるのは、1990年から行われたニューヨークでの犯罪対策です。

この犯罪対策は、まず地下鉄の無賃乗車を徹底的に取り締まることから始め、ニューヨーク市全土へ同様の対策を広げたことで犯罪を半減させることに成功したものです。(もっとも、犯罪減少の全てがこの施策によるものとは言い切れません)

しかし、このような警察の活動方針は行き過ぎたものであり、独善的であると同時に財政的にも問題があると批判されることがあります。

 

割れ窓理論は批判にどう回答するか

①社会的弱者≠無秩序

ホームレスであることが取り締まりの対象となるのではなく、特定の目的をもってホームレスでいることが問題なのだという反論です。

というのも、当時のアメリカのホームレスには、攻撃的な物乞いをする目的や薬物依存によって路上生活をする人が大多数であったといいます。

取り締まるべきは貧困でやむを得ずホームレスとなっている人ではなく、強奪、通行人の脅迫を目的としている人、そして薬物乱用にふける人である。このような意見をもって人権団体への反論としました。

割れ窓理論においては、大多数の人々と異なる社会的弱者=無秩序ではないということをきっぱりと主張したことになります。

割れ窓理論ゼロ・トレランス

割れ窓理論に基づく施策は、決して徹底的な不寛容ではないとする意見です。

そもそも割れ窓理論の実践には、警察と地域住民との密なコミュニケーションが必要不可欠です。そこでは住人がどのような行為に不安を感じているのか、何を取り締まってほしいのかをしっかり聞き取る必要があります。

割れ窓理論において無秩序を定義するのは警察ではなく地域住民の総意です。警察による一方的な価値観の押し付けをすることはなく、そもそも割れ窓理論ゼロ・トレランスは別物であることを主張したことになります。

ある調査によると、ニューヨークの無賃乗車取り締まりの強化を行っても警察へのクレームは増加しませんでした。これは住民の多くが無賃乗車に対して不安を感じていたことの証左であると考えられています。

取り締まり強化に動いた警察本部長も、自分たちの行いは独善的なゼロ・トレランスと呼ぶべきものではないとの意見を明らかにしています。

 

批判に対する割れ窓理論からの回答によって、理論の本質がはっきりしてきたのではないでしょうか。

排除すべきは特定のモノやヒトではなく、あくまで市民の不安を惹起する行いであることが示されました。そしてそれは、市民との密なコミュニケーションによって共に定義していくものとしています。

割れ窓理論は、決して警察の独断や独善によって人々の自由を奪うものではないとケリングらは主張したのです。 

 

割れ窓理論を正しく活用するには

日本ではどう活用されているか

現在、日本では割れ窓理論に基づく地域安全活動が全国的に行われています。一見犯罪とは関係のない清掃活動から始まり、地域住民への声かけや徒歩でのパトロールが活動内容の中心となっているようです。

さらに活動の主体を警察に一任するのではなく、住民が自治体等を通して積極的に参加している場所も少なくありません。これは地域の防犯としては理想的な形です。

日本の割れ窓理論に基づく活動は、すでに高い水準にあるのではないでしょうか。

 

忘れてはならないこと

割れ窓理論の批判にもありましたが、秩序を守ろうとして「すべてのモノやヒトにはあるべき場所がある」という活動理念を持ってしまうと、監視社会・不寛容社会に繋がる危険性があります。

これはもはや割れ窓理論を飛び越えた強烈な秩序維持政策であり、日本のほとんどの地域には適さないでしょう。

目につく無秩序のすべてを有害と決めてしまう前に、本当にこの無秩序は正すべきなのか当事者である住民と検討する必要があります。割れ窓理論の正しい実践には、このプロセスが大切です。

「ドーナツ買うよ」福岡市6歳女児誘拐はなぜ止められなかったのか

事件記事

 「ドーナツ買うよ」

甘い言葉で6歳の女児を自宅へ連れ込んだ無職・宮口俊彦容疑者(56)。

女児は危害を加えられずに開放、容疑者は逮捕され事件は無事に解決しました。

……が、しかし。この事件はある映像の存在により、大いに人々の反響を呼ぶこととなります。

その映像には、自宅へ向かう容疑者と、後に続く6歳女児の姿がありました。防犯カメラが、2人の姿を捉えていたのです。

白昼堂々の犯行。宮口容疑者は人目を恐れなかったのか。
どうして女児はついて行ってしまったのか。

異様な光景に疑問は尽きません。

 

なぜ、宮口容疑者による女児誘拐は止められなかったのか?

本事件の疑問を解決しつつ、日常に潜む児童誘拐の危険性を考えます。

 

本事件の経緯

本事件は、9/16の16時ごろに起きました。

福岡市東区の商業施設にて、宮口容疑者は6歳女児にお菓子を買い与え、その後同区内の自宅へ招いたとされています。

誘惑の言葉は「ドーナツ買うよ」。1人で歩いていた女児は、この甘言により宮口容疑者について行くことになりました。

その後、宮口容疑者の自宅内で1時間ほどアニメを見るなどし、「次のピアノ教室は何曜日?また会おうね」と再会をほのめかしつつ別れたといいます。

その一部始終は、宮口容疑者宅であるマンションや街中に設置された防犯カメラに撮影されていました。映像からは、宮口容疑者と後に続く女児の姿が確認できます。

10/1、宮口容疑者は未成年者誘拐の疑いで逮捕されました。逮捕に至った経緯として、ある報道では防犯カメラの映像が決め手と言われています。

女児にけがはありませんでした。

本事件について宮口容疑者は、「女の子を連れている姿を誰にも見られなかったので、自宅に連れて行った」と供述しています。

 

防犯カメラの映像

本事件が衝撃的である理由の1つに、公開された防犯カメラの光景が挙げられます。では、事件の一部を捉えた防犯カメラの映像をご覧ください。

こちらは動画です。

youtu.be

以下は静画です。

防犯カメラの映像
歩道を通る2人。道路には車の往来がある

防犯カメラの映像2
容疑者マンションの防犯カメラの映像。カメラの存在は知っていたのではないか
画像引用:FNNプライムオンライン

白昼堂々、女児を連れ歩く容疑者の姿が映し出されています。その様子からは、急いだり人目を気にしたりという素振りを伺うことができません。

「女の子を連れている姿を誰にも見られなかったので、自宅に連れて行った」と述べた容疑者ですが、動画からは車や人の往来があることがわかります。明らかに目撃はされていたはずです。

しかも、自宅マンションの防犯カメラの存在は知っていた可能性もあります。

目撃証言やカメラの映像をたどれば、容易に犯行が暴かれることは想像に難くありません。

なぜ宮口容疑者はそれでも犯行に及んだのでしょうか。その答えの1つに、容疑者の以前からの素行があります。

彼は、以前から女児への声かけを繰り返していたのです。

 

宮口俊彦容疑者の人物像

まずは近所のコンビニ店員による証言をご紹介します。

 「小学生低学年くらいの女の子と私のコンビニの店内でぐるぐる走り回ってて、男性本人はすごく楽しそうにしていて、何かおごってあげようか?と女の子に言ってて、ただ女の子はかなり遠慮がちでした」
引用:FNNプライムオンライン

次は近所の住人による証言。もとより宮口容疑者は、人目のつく場所で女児との接触を繰り返していたことがわかります。

「うちの姪っ子にお菓子とかをあげようとしてずっと話しかけていました。ちょっと変わった人だなと思って」
引用:FNNプライムオンライン

さらに容疑者本人の口からは、数十回は女児への声かけをしたことがあるとの供述がされています。

宮口容疑者にとって女児への声かけは日常の一部となりかけていたのかもしれません。

そして同時に、自分が奇異のまなざしで見られることにも鈍感であると推測されます。

宮口容疑者のこの性格特性は、以下のエピソードによっても裏付けられます。

自宅周辺には、宮口容疑者が酒に酔って暴れるなどしたため、何度も迷惑を受けたとして出入り禁止にする店もあります。
引用:FNNプライムオンライン

宮口容疑者の遵法意識は、本事件に異常性を感じる大多数の人よりは低いものと推察できます。

 

なぜ女児は誘拐されたのか

「不審者には気を付けて」「知らない人について行ってはいけない」教師や大人は口酸っぱく言うものですが、実は子供にこの判断を任せることは非常に危険なことでもあります。

子供にとって誘拐犯は、不審者でも知らない人でもない。

この視点が欠けているからです。

どんな人が不審者なのか?これを子供に聞くと、サングラスやマスクをしている人と答えると言われています。

しかし、こんな姿をした不審者はごくまれ。例えば岡山の不審者情報によれば、サングラスをかけていたのは全体の3%、マスクをしていたのは全体の1%となっています。(※1)

こと誘拐犯においては、極力目立たない(周囲から浮かない)恰好を心がけるものです。本事件の宮口容疑者の服装からもそれが伺えます。

そして子供にとっては、少しでも仲良くなった人はもう他人ではありません。優しげで親しく接してくる大人は信用してしまうものです。

本事件の場合も、誘拐された子供の判断力が低かったと責めるより、宮口容疑者の子供と仲良くなるスキルが高かったのだと考えるべきでしょう。

さらに厄介なことに、宮口容疑者は以前から女児への声かけを繰り返しています。あくまで推測ですが、女児が宮口容疑者と出会うのは今回が初めてではなかった可能性さえあります。

 ※1 小宮信夫「犯罪は予測できる」新潮新書 

 

不審者はいないという教訓

ここで本事件を通じて、僭越ながら1つの教訓を提示します。

それは「不審者はいない」ということ。

本記事を書くにあたって大いに参考としている小宮信夫教授の意見でもありますが、子供に不審者という存在を意識させることは防犯上の大きな脆弱点となり得ます。

不審者に気をつけなさいと言われた子供は、奇妙な身なりをした大人に注意を払います。その一方で、児童誘拐を企てて接近してくる、身なりの整った優しい大人には無防備となりかねません。

子供に人を外見で判断させることは、大人の危険な内面に気づきにくくさせる可能性さえあります。

誘拐犯と子供の内面の探りあいにおいて、子供に勝ち目はないでしょう。結局はだまされてついて行ってしまうのです。

 

誘拐犯から子供を守るために

では、どうやって子供を誘拐犯から守ればよいのか。その問題の解法の1つが、地理的な危険箇所の把握&回避です。

例えば、自治体が行っている不審者情報の活用。

この場合の不審者とは子供に危険なアプローチを行った者のことであり、明らかに危険な大人のことを指す言葉として有用です。そして不審者情報の発信は、周辺地域のリスクが上昇したことを意味します。

不審者の出現が地域のリスクをどの程度高めるのか?実際に調査した研究があります。

その研究によれば、声かけ等の不審者遭遇情報発生後、少なくとも1か月は周囲1kmの範囲に性犯罪のリスクが優位に上昇したとされています。※2

この研究の対象はあくまで性犯罪ですが、地域防犯や自衛のために利用できる情報であることは確かです。

他にも、犯罪者が行動しやすい危険な場所をピックアップすることも大切です。

本事件において容疑者が女児と接触した場所ははっきりしていませんが、それなりの人通りのある場所と推測できます。もしかすると、商業施設の人混みの中だったかもしれません。

人がたくさんいる場所では誘拐しづらいのでは?と思うかもしれません。しかし人混みは、誘拐犯にとってはむしろ格好の狩場となるのです。

人混みは監視の目があふれているように見えますが、実際は逆です。他人だらけの場所では、人々の注意は分散され、怪しい人物や怪しい行動がかえって見えづらくなります。

さらに誘拐犯が標的となる子供を探すのに格好の場所でもあります。好みの子供を見つけたらその場で声をかけても良いし、尾行して人気のない路地になったところで接触することも可能です。

※2 菊池城治ら「声かけなどの不審者遭遇情報と性犯罪の時空間的近接性の分析」犯罪社会学研究 第34号

 

女児誘拐はなぜ止められなかったのか。その答えは、あくまで憶測となりますが……

  • 宮口容疑者が「不審者」ではなかった事
  • 被害女児を誰の目も「真剣に」見ていなかった事

この2点に集約されるのではないでしょうか。

ガス点検やコロナアンケートを装った強盗が横行中!アポ電対策がカギ

ガス点検を装った強盗事件多発中

 

最近、ガスの点検を装った強盗事件が多発しています。

また新型コロナのアンケートを装った強盗事件も起きてしまいました。

注目すべきは犯人たちの粗暴さ。招き入れたが最後、突然暴力をふるい強引に金品を奪う手口が好まれているようです。

さらに、全国ニュースで取り上げられたことで犯人たちが手口を変えてくる可能性も。おそらく事前にアポ電をかけてターゲットの情報を知る&信用させる手口が増えてくるのではないかと推測します。

被害を防ぐためには、まずは犯行グループの手口を知ることが大切です。そのうえで、玄関口での防犯やアポ電対策を行うことが好ましいでしょう。

今回は、身を守る心掛けに加えて、玄関口やアポ電にて犯罪者への威嚇を行える機器のご紹介をします。

犯人の手口

「ガス器具の点検に来ました」
新型コロナウイルスのアンケートに協力してもらいたい」

ドア越しにこのような説明をしてくる例が確認できています。

室内に入れてしまうと突然家人を拘束し、「金を出せ」と強迫してきます。

男2人以上で訪問してくることが多く、抵抗は実質不可能であるどころか暴力を振るわれるリスクが上がるだけです。実際、何らかの暴力を振るわれている例は複数あります。

男らは「金を出せ」と夫を脅して顔面を殴りケガをさせたほか、妻の首を絞めるなどしましたが、夫婦が抵抗したため何も奪い取らずに逃走したということです。
9/21(月) 日テレNEWS24

 

同日夜に帰宅した息子が縛られた状態の女性を発見し、110番通報。女性は肋骨(ろっこつ)を折るなど全治3カ月の重傷を負った。
9/25(金)  産経新聞

 

犯行グループのメインターゲットは60歳以上とみられています。

おそらく事前にターゲットの情報は調査済みで、高齢者がいるかどうか、その他の家族構成、在宅時間はいつか、さらに資産状況も把握されている可能性が高いです。

そして悪質なのが、例え怪しんで断ったとしても強引に押し入ってくる場合もあることです。以下の事件では、家人が警戒したにもかかわらず被害にあってしまいました。

捜査1課によると、2人は自治体職員を装って女性宅を訪問し、「新型コロナウイルスのアンケートに協力してもらいたい」などとインターホン越しに説明した。親族と電話中だった女性が断ると、無施錠の掃き出し窓から侵入してきたという
9/25(金) 産経新聞 (一部抜粋・文字強調は筆者)

 

警視庁によりますと、20日午後1時半すぎ、東村山市にある80代の夫と70代の妻と息子が住む住宅に、若い2人組の男が「ガスの点検に来た」などと言って押し入ったということです。

この際、妻が「うちはプロパンなのでいらない」とインターフォン越しに断りましたが、男2人は無施錠の玄関から侵入したということです。
9/21(月)  日テレNEWS24 (一部抜粋・文字強調は筆者)

 

犯人たちは初めから強盗のつもりで訪問しています。この向こう見ずな性質は、被害者の命さえも危うくしかねません。

さらに、事前に訪問を伝える「アポ電」も確認されています。公共機関をかたった丁寧な電話を受けると、つい信用してしまいやすく、要注意です。

アポ電とは?

ターゲットの状況確認や、後の訪問を正当なものと信じさせるための電話。
「お金はありますか」
「ガス点検に行くが家にいますか」
このような例が確認されています。

この文面だけなら怪しいと疑えるかもしれませんが、実際には巧みな話術や背景音が駆使されており、つい信じてしまいがちです。

 

このように、犯行グループは周到な準備と強引さで家に押し入ってきます。メインターゲットが高齢者ということもあり、対策するにも「気を付ける」という精神論では足りないと考えるべきでしょう。

次に、被害を避けるための具体的な対策をご紹介します。

 

対策① ガス点検やコロナアンケートについて知る

ガス会社からも注意喚起されている

「本物のガス点検と見分けがつかない」ことが、被害の始まりです。

しかし、一連の事件を受けてガス会社から明確な注意喚起がありました。以下は東京ガスからのお知らせの抜粋、意訳です。

・事前にチラシ等にて、訪問予定日をお知らせする。

・作業員は、左胸に東京ガスのロゴ、ライフバルやエネスタのロゴが入った制服を着用し、「身分証」を携行している

・アンケートと称して家族構成や資産状況などの情報を訊ねることはない

なお、一部報道では「訪問前の電話連絡はしない」「ガス点検時、ガスメーター周りの作業以外で屋内に入ることはない」と伝えられました。

しかし東京ガスはこれを誤りとして、場合によっては電話連絡や室内の点検も行うことがあるとしています。

(あくまで抜粋、意訳のため、本文を一読されることを推奨します。
東京電力 東京ガス社員などを装った訪問や不審電話等にご注意ください
東京電力  当社グループのガス設備定期保安点検における事実と異なった内容の報道について

 

点検員が来たらどうしたらよい?

まずはドアを開けない事。もちろん、普段から施錠はしておきましょう。

そして、身分証や身なりの確認をする場合もドアチェーンを外さない事。

この2つを念頭に置いた上で、説明不足を感じたら会社や事業所に電話すると確実です。

あらかじめ番号を携帯電話に登録したり、張り紙に書いたりしておくと落ち着いて対処しやすくなります。

 

嘘のコロナアンケートを見抜けるか

厚生労働省は新型コロナを利用した詐欺事件を受けて、個人情報を聞く、助成金を受けられるという趣旨の電話はしないと発表しています。

しかし、これはあくまで詐欺事件全般への注意喚起。コロナアンケートについて「絶対に訪問しない」と明記している機関は、9/27現在確認できません。

アンケートに限らず、新型コロナに関係づけた訪問理由は多岐にわたることが推測されます。

これまでに確認された訪問理由

・水道の洗浄が必要

・近所で感染者が出たため、室内を消毒する

・金の相場が上がるとの相談

このようにバリエーションに富んだ理由が持ち出されています。これからも増えることでしょう。アンケートなどの訪問が悪意あるものかどうか見分ける事は簡単ではありません。

 

コロナ関係で訪問されたらどうすればよい?

ガス点検と同様の対応が必須です。

ドアを開けない、本人確認の際にはドアチェーンをかけて対応する、そして自治体や機関をかたる場合、その電話番号を自分で調べて電話で確認をしましょう。

 

対策② 電話機器やドアホンの性能で犯罪者のやる気を削ぐ

アポ電に出ないための防犯電話

事前に来るアポ電を回避し、犯罪者のやる気を削ぐには電話機器の防犯機能を利用するのも良い手です。

まず、アポ電には出ないことが最善。登録者以外の番号から電話が来た場合、ユーザーに警戒を促す機能をもつ電話機器があります。

赤色ランプ点灯イメージ
画像引用:SHARP 「JD-AT95」
番号未登録者からの電話は赤色ランプで警告する

また、犯人側に警告メッセージを流す機能も。万が一電話に出てしまった場合に備え、「防犯のために通話が録音される」旨のメッセージを流せばユーザーの警戒心を犯人に伝える効果も期待できます。

犯人への警告メッセージ
画像引用:SHARP 「JD-AT95」
警告メッセージは、本人を含めた家族の防犯意識の表れにもなる

基本的にアポ電は、警戒心を解いたりパニックにさせて判断力を鈍らせたりするよう工夫されています。そのためアポ電には出ないことが最重要。どのような電話機器でも、この2種の機能は欲しいところです。

録画機能付きドアホンでためらわせる

犯人としても、訪問時に顔を録画されるのはできれば避けたいはずです。似た条件のターゲットなら、録画ドアホンがない家を選ぶでしょう。

明らかにカメラが搭載されていることがわかるドアホンなら、下見や訪問時にためらわせることができる可能性があります。

カメラ付きドアホン
画像引用:アイホン 「KM-77 カメラ付き玄関子機」
大きめのカメラは「撮っている」ことがわかりやすい

録画は、できれば動画が好ましいです。静画では角度や帽子などによってうまく顔を録画できない場合があります。夜間の訪問に備え、センサーライト付きを選ぶとなお安心。画角もなるべく広いものを選びましょう。

広い画角イメージ
画像引用:アイホン 「ROCOタッチ7」
広い画角で不審な動きもキャッチ

とはいえ、一連の訪問強盗事件からは多少の証拠が残ることもいとわない乱暴さが伺えます。たとえカメラで撮影されても侵入を強行する可能性もあるため、過信は禁物。まずは普段の戸締りやアポ電対策で被害を防ぎましょう。

 

まとめ

最近首都圏を中心に頻発している、ガス点検を装った強盗。コロナのアンケートをかたった例も確認されており、これからの手口の変化も予想されます。

手口が多少変わっても、まず意識すべきは施錠の徹底と簡単にドアを開けないこと。そしてアポ電への対策として、防犯機能を備えた電話機器を利用することも重要です。

訪ねてきた人が本物だったら失礼だし……と考えてしまうかもしれませんが、多少の時間をかけても、本人の身分証確認や強盗ではないか考える猶予は欲しいところ。

コロナ渦では、想像だにしない理由で訪問者が現れるかもしれません。しばし時間を頂くこととして、犯罪被害に遭わないための習慣をつけましょう。

【一戸建て編】空き巣が侵入しやすいポイント

一戸建て住宅、空き巣が狙う場所とは

空き巣は財産を奪うだけでなく、場合によっては居直り強盗と化して身体の安全も脅かします。安心して暮らすためには、最低限の防犯への備えが必要と言えるでしょう。

そんな空き巣には、実は定石とも言える侵入しやすいポイントがあるのです。

この記事では、空き巣が侵入しやすい危ない場所を列挙します。該当する場合には、何かしら対策することが好ましいでしょう。

開けっ放しの窓、美しい花が咲き誇る庭……あなたの暮らしやすさが、皮肉にも侵入窃盗の被害リスクを上げてしまっているかもしれません。

一戸建ての危ない場所とは? 

まずは空き巣の侵入経路になり得る、危ない場所をピックアップします。

①玄関

②窓

③裏口、勝手口

④家を囲う塀や植物

⑤2階以上の上階

この5つについて、どんな状態が危険なのかを確認しましょう。

①玄関

・通りに面した玄関

ただの通行人を装って、通りからすぐにアクセスできてしまう玄関。実はとても危険です。

想像するとわかりやすいのですが、通りから奥まった位置にある玄関には近づきがたいものです。

たとえ回覧板を回すなどの正当な理由があっても、人様の家の門を通って玄関へと近づくには一定の緊張感があるでしょう。

「ここからは他人の領域だ」と感じさせるスペース。これを「領域性」と呼びます。通りから距離のある玄関は領域性を確保でき、空き巣は仕事しづらくなります。

領域性が確保できているアプローチ例
通りから距離があるため、近寄りにくい玄関。
写真引用:名古屋の工務店コスモホーム

空き巣にしてみればドアの防犯性能の下見は必須項目です。通行人のふりをしてふと立ち止まり、ドアの鍵などを調べる。これが容易にできてしまう家は高リスクです。

・乱雑な郵便受け

空き巣は郵便受けの状態を見ることで、家主の性格まで推測してしまいます。チラシや新聞が溜まった郵便受けによって、家主はルーズな性格であり、防犯面においての意識も同様であると推測されかねません。

もしあなたの郵便受けにチラシや新聞などが溜まっていたら、すぐに回収することをお勧めします。

請求書などから個人情報を見られるリスクもあり、特殊詐欺の標的となる可能性まで孕んだ危ないポイントです。

②窓

・クレセント錠だけの窓

他の記事でも言及していますが、空き巣の6割は窓から侵入します。窓の施錠状況は、安全に直結する大切なポイントです。

あなたの家の窓には、鍵は付いているでしょうか?半月型のクレセント錠のみという方が多いのではないでしょうか。

空き巣は20秒以内に窓を割り、クレセント錠を開けて侵入できます。クレセント錠には事実上の防犯性能はありません。サッシ部分に取り付ける補助錠や、ロック機能の付いたクレセント錠で窓を守りましょう。

クレセント錠の写真
この写真のようなワンタッチ式ロックは効果がありません。ダイヤルキーや鍵穴付きのクレセント錠が好ましい。

このような対策は、防犯上「対象物の強化」として大切な概念となっています。

・通常の窓ガラスや網入りガラス

特に断りがないかぎり、窓に使われるガラスはフロート板ガラスという3~4mmの単層ガラスです。これはほんの数秒で割られてしまう脆いガラスです。

また、一見頑丈そうに見える網入りガラスは、実は防犯性能がとても低いガラスです。網が入るためにガラス自体の強度は低く、金属網もかんたんに切断できてしまいます。

網入りガラスのそもそもの目的は、火災時の延焼抑止です。ガラスが割れても脱落しないことで、火が燃え広がらないように工夫されたもの。見た目とは裏腹に防犯性能はほとんどありません。

対策としては、割られにくい防犯ガラスにする、防犯フィルムを貼るといった方法が中心となるでしょう。これも「対象物の強化」です。

・ネジ山が露出した窓の格子

窓の外側に格子を取り付けているお宅をよく見かけます。しかし格子を取り付けたことで安心されたのか、ネジ山が露出していることも少なくありません。

頑丈な格子も、ネジをはずされてしまえば撤去可能です。ネジ山はドリルなどでしっかりとつぶしてしまいましょう。

③裏口、勝手口

・近隣から見えづらい勝手口

勝手口は極力見えづらいようににしている、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。見えづらいということは、空き巣も隠れて作業しやすいという事になります。

勝手口とはいえ、できる限り人が隠れにくい開放的な空間にすることが大切です。すでに狭い空間としてデザインしてしまった方は、きれいな花のプランターを置くのも良いでしょう。近所の視線が集まるようになれば、空き巣もそこから侵入しづらくなります。

この考えを「監視性の確保」と言います。

人目を引いて見つかりやすくするという観点から、砂利を敷くことも一定の効果が期待できます。砂利から発せられる音は、結果的に周囲の目を集めることに繋がります。

④家を囲う塀や植物

・近隣からの視線を遮る塀や植物

プライバシーを守るために家の周りを高い塀で囲むと、他人から見られない快適さを得られる一方で、空き巣にとって潜みやすい空間が作られてしまいます。

庭の植物も同様で、自分好みのガーデニングが空き巣を招くという皮肉な結果にもなりかねません。

基本的には、格子などの視線を完全には遮断しないタイプの塀が好ましいです。低い位置はブロック、高い部分は格子というように併用しても良いでしょう。これも「監視性の確保」です。

格子状の塀の写真
隠しつつも、人の存在はわかる程度の塀。
写真引用:名古屋の工務店コスモホーム

ただ、プライバシー保護と監視性の確保は相反します。空き巣に強い家づくりをするにあたって、かなり悩ましいポイントとなるでしょう。

⑤2階以上の上階

・2階へ上る足がかりとなるもの

2階なら窓を開けっぱなしで出かけても大丈夫……その油断を狙うのも空き巣の常套手段です。

空き巣は窓の上の庇(ひさし)、カーポートの屋根を足場にして2階へ上ることがあります。雨どいの縦パイプも、ちょうどよい侵入経路となり得ます。

雨どいの写真
雨どいの縦パイプ(竪どい)。身軽な空き巣なら上ることができる。

屋外に設置した倉庫や、つい置きっぱなしのポリバケツなども足場となるでしょう。プロの空き巣なら、自転車のような外に置いて当たり前の物を上手に活用して2階へ上ることも可能です。

2階の窓も安全とは言い切れません。戸締りは忘れずに行いたいところです。

・隠れることができるバルコニー

外から見えないバルコニー内は、空き巣の良い隠れ場所となります。いったん身をひそめることができれば、余裕をもって窓をこじ開けることが可能です。1階よりもかえって危険かもしれません。

格子や網状のフェンスによってシースルーのバルコニーにすることで、「監視性の確保」を狙うのが有効です。

・隣接する建物との距離感が近い

住宅地では特に注意したいポイントです。隣の集合住宅の非常階段からバルコニーに飛び移る。そんなアクロバティックな犯行も想定しておくべきでしょう。

集合住宅でなくても、隣人の植えた木や建てた塀を利用して2階へ上られる可能性も十分に考えられます。自分の家は十分に空き巣対策できていると思っていたら、隣人がちょうどよい侵入経路を作ってしまっていた、なんてことも。

 

一戸建てにおいて危険なポイントをざっと列挙しました。考えることが多くて大変だと感じませんでしたか?

確かに、しっかりと空き巣対策をするには考えなくてはいけないことがあまりに多いのが現実です。脆弱な場所に気づけないこともあるでしょう。

そこで、これさえ覚えておけば防犯の地頭が良くなると言っても過言ではない、防犯のための3つの法則をご紹介します。

それはすでに出てきた「領域性の確保」「監視性の確保」「対象物の強化」の3つの法則です。

 

空き巣を寄せ付けない「領域性の確保」「監視性の確保」「対象物の強化」の法則

難しそうな用語を使ってはいますが、次のようにイメージすると実にシンプルです。

近づきづらい雰囲気がある(領域性の確保)
   ↓
近づく姿が見られやすい(監視性の確保)
   ↓
近づいたところでこじ開けられない(対象物の強化)

 

防犯を意識するとなると、ついドアや窓を強固にすることに注目しがちかもしれません。しかし領域性や監視性を確保して近づきにくい家にすることも重要です。

この3つの法則について、それぞれもう少し踏み込んだ解説をします。

領域性を確保する方法

近づきづらさを与える領域性は、いわば結界のようなものです。とはいえ立ち入り禁止のテープを張り巡らせて、物々しい景観にする訳にもいきません。さりげなく「ここから先は無断で入るべきではない」というメッセージを与えることが、実際の空き巣対策では重要です。

例えば道路との間に門や庭、玄関へのアプローチを置き、公共の場所から距離を取ることが好ましいでしょう。敷地内の目いっぱいに建物を建ててしまうと、道路から簡単に扉や窓にアクセスできてしまいます。

もちろん、塀や花壇で道路との区切りを設けることも大切。よりフラットな設計とするなら、敷地内に芝生や砂利を敷いて私有地であることをアピールするのも効果的です。

要するに「偶然通りかかった」という言い訳を許さない空間デザインをすることが、領域性の確保につながるのです。

監視性を確保する方法

いくら領域性を確保しても、いったん敷地内に入れば外から見えないのであればリスクは高いままです。図々しく敷地に侵入したとしても、その光景を誰かに目撃されやすい見通しの良さを確保する必要があります。

積極的に採用したいのが、格子です。敷地の塀やバルコニーに格子を使うことで、丸見えではなくともそこに人がいることがわかる程度の見通しを確保できます。

人の目を集める物、例えば花を飾るという方法もあります。ただし手入れをしっかりないと遮蔽物となり得るほか、家主のズボラさを空き巣にアピールすることにもなってしまうかもしれません。

また、近所との良好なコミュニティも監視性を高める有効な手段です。近所の異変に無関心な地域であるかどうか、空き巣は下見の時点でチェックします。

対象物を強化する方法

基本的には、ドアや窓の防犯設備を充実させることで対象物を強化できます。

重要なのは、ワンドア・ツーロックを徹底することです。空き巣の7割は侵入に5分以上かかると犯行を諦めるとされており、複数のロックで侵入に時間がかかると悟らせることは有効な手段です。

プロの空き巣はドアや窓をこじ開ける方法を熟知しているため、侵入不可能とすることは現実的ではありません。しかし、空き巣は開錠に時間をかけて誰かに目撃されることを非常に恐れます。

既にお分かりかもしれませんが、領域性や監視性が確保されていることは、対象物の強化と組み合わせるべき必須の条件でもあるのです。

 

まとめ

一戸建てにおける、空き巣に狙われやすい危険なポイントを解説しました。ここで挙げたような箇所を極力減らすことで、被害に遭うリスクを軽減させることができるでしょう。

ただし、危険なポイントはその家や近隣の建物によって微妙に変化します。マニュアル的ではない、柔軟な対策が必要となる場合も考えられます。

そのためには「領域性の確保」「監視性の確保」「対象物の強化」の3法則を念頭に置くことで、効果的に防犯環境を整えることが可能となります。

クレセント錠に防犯効果はない?空き巣の嫌がる窓づくり

 

実は危ないクレセント錠

 「クレセント錠には防犯効果がない」と聞いたことはありませんか?

「錠」と言うのに効果なしとは不思議な話です。
しかし、確かにクレセント錠の効果は極めて限定的と言えます。

内側からしっかり窓を固定するのに、どうして効果がないのでしょうか。
それは空き巣がクレセント錠への対策を熟知しているためです。

今回は空き巣の目線からクレセント錠の脆弱性について考えます。手口がわかれば、自然と効果的な対策を講じることが可能となるでしょう。

クレセント錠は本当に空き巣対策にならない?

防犯効果はない

空き巣が目当ての家に近づいたとき、窓越しに見えるクレセント錠。実は空き巣にとってこれほどたやすく開けられる錠はありません。

空き巣は20秒足らずで窓ガラスを割り、クレセント錠を開錠するスキルを持っています。

わざわざ広い面積を割る必要はありません。クレセント錠の付近に拳が入る程度の穴を空ければ十分なので音も小さく、近所の人の耳にも届きにくいでしょう。

空き巣に割られた窓

画像引用:有限会社水谷硝子店

 クレセント錠が効果を発揮するとすれば、それは通りがかりの空き巣に対してのみ。無施錠の窓やドアを狙う、機会犯的な空き巣なら諦めてくれるかもしれません。

とはいえ、空き巣の機会犯はどのくらいいるのでしょうか?
参考になるデータを見てみましょう。

下見の有無の割合

出典:(社)日本都市計画学会 都市計画報告集No.8 2009年8月

 下見しなかった者が約8割というデータです。意外と多くて安心しませんでしたか?しかし、8割すべての空き巣にクレセント錠が有効というわけではありません。

下見をしない機会犯でも、窓ガラスを割って侵入することは少なくありません。何より、このデータは拘置所の収容者が対象です。入念に下見をし、逮捕されないでいるプロの空き巣は反映されていないことになります。

この年の侵入窃盗罪の検挙率が50%程度であることが、この統計を鵜呑みにできない大きな要因です。

もっとも、以下のように侵入窃盗を決意させる要因として「無施錠」が27%を占めているため、(当たり前ですが)クレセント錠をすることによる効果はゼロではありません。 

空き巣の侵入手段

出典:警察庁 平成30年の刑法犯に関する統計資料

しかし常習犯となると話は違います。何度もターゲットの下見をして、見つからないように計画を立ててから犯行に及びます。そんな常習犯にとってクレセント錠は全く脅威ではありません。 

空き巣が下見するポイントの一例

・周囲から見えにくいか
・どんな施錠がされているか
・住人がいない時間帯
・住人の家族構成
・近所の治安への関心度

ここまで入念にチェックされてしまうと、外から丸見えのクレセント錠はむしろ「この家は入りやすい」というサインにもなりかねません。

また、プロの空き巣はガラスを割らずにクレセント錠を開ける方法も心得ていると言われています。痕跡の残らない開け方をされた場合、家の住人は「鍵を閉め忘れたかもしれない」と考えるかもしれません。

統計上の「無施錠」には、プロの空き巣による未知の犯行が含まれている可能性もあるのです。

 

クレセント錠の本来の役割

本当の意味を知ろう

クレセント錠は鍵ではないと言いましたが、ではどんな役目を持った部品なのでしょうか?

これは少し豆知識的な話。窓の歴史を簡単に振り返ってみましょう。

古くから日本では、木製の窓が使用されてきました。この木製窓を固定する道具として登場したのが、「ネジ締まり」です。

ネジ締まり

画像引用:たましま設計施工社

これは名前の通り、ネジを回すようにして引き違いの窓を固定する道具です。クルクルと回す感触が懐かしいという方もいらっしゃるのではないでしょうか?

時代が進むにつれ、木製の窓はアルミ製などに置き換わりました。その頃に登場したのが「クレセント錠」です。

クレセント錠は三日月形状となっており、窓を強く引き寄せて密閉する効果があります。ネジ締まりにはできなかった、部屋の気密性や防音性を向上させることができる優れものと言えるでしょう。

非常に機能的な部品ではありますが、防犯の観点から見ると決して褒められたものではありません。ワンタッチで開けられてしまうため「防犯効果はほぼない」と不名誉な評価を下されています。

クレセント錠は、木製窓時代のネジ締まり以上に空き巣にやさしい部品となってしまったのです。

空き巣の手口が洗練された現在では、もはや鍵としての機能は期待されていません。あくまで気密性を確保するものであり、錠ではないとして「クレセント」と表記する建具メーカーもあるくらいです。

 

窓の防犯性能を高めるには?

防犯性能を高める

これまでクレセント錠の脆弱性についてご紹介しました。しかし多くの方が、「うちにはクレセント錠しかない」「賃貸だからリフォームできない」というお悩みをお持ちではないでしょうか。

窓が無防備であることは、財産や身体に害がおよぶ直接のリスクとなります。

次に、窓の防犯性能を高める方法をお伝えします。

 

ロック機構付きのクレセント錠への交換が簡単

クレセント錠にはロック機構が合わさったものがあります。これを採用することで、仮に窓を割られてもクレセント錠を開錠できず空き巣をあきらめさせる効果があります。

基本的にはドライバー1本で現在のクレセント錠と交換でき、賃貸やDIY初心者の方にも使いやすいものです。

ロック機構付きクレセント錠には、主に以下の2タイプがあります。

鍵付きクレセント

鍵付きクレセント

 画像引用:株式会社あんしん壱番 商品紹介ページ

クレセントの操作に付属の鍵が必要なタイプです。鍵を無くさない、かけ忘れないことが前提となりますが、ロック機構のないクレセントより格段に防犯性能はアップします。

基本的に手軽にDIYできますが、クレセントを受ける「受け金具」との距離がピッタリ合わず、高さ調整用のスペーサーなどでの軽い位置調整が必要となったケースが散見されます。サイズの確認やスペーサーが付属しているかを確認して購入しましょう。

ダイヤル鍵付きクレセント

ダイヤル鍵付きクレセント

画像引用:The・Kagi堂 商品紹介ページ

指定の番号にダイヤルを合わさないと開錠できないタイプ。ショップによっては番号を指定できる所もあります。複数購入の場合は、それぞれの番号をバラけさせる注文が可能な場合もあり、安全度の向上に役立つでしょう。

 

補助錠と組み合わせてさらに防犯性能アップ

さらに防犯性能を高めたい、またはクレセント錠の交換が難しいという場合は、補助錠を使うことがお勧めです。

補助錠の多くは両面テープでサッシや窓に貼りつけ、窓をロックするもの。十分DIYで可能なレベルですが、ワンタッチでロックと解除を切り替えられるため、単体での防犯性能は高いとは言えません。

しかし空き巣にとっては、クレセント錠を外し、さらに補助錠も外さなければいけないという状況がプレッシャーとなります。

補助錠は下の画像のように、できるだけ高い位置への設置をお勧めします。空き巣が立ち上がらなければ届かないため、人の目に付きやすくなります。 

ワンタッチ補助錠

画像引用:株式会社あんしん壱番 商品紹介ページ

この補助錠は、窓ガラスに貼るタイプ。屋外に向けて「防犯装置設置」のステッカーでアピールすることもできるため、抑止効果が期待できます。

ただ、「こんな簡単なロックで本当に効果があるの?」と心配になる方も多いのではないでしょうか。

実際の効果について知るには、侵入犯の声を聞くのが一番。侵入をあきらめる要因についての調査結果がありますので、確認してみましょう。

 

都市防犯研究センター jusriリポートによれば、侵入犯が犯行をあきらめる要素ベスト5は、以下の通りです。 

1位 声をかけられた、顔を見られた
2位 ドアや窓に補助錠が付いていた
同率3位 犬を飼っていた・警報装置が付いていた
同率5位 防犯カメラ・面格子の設置

 

補助錠は2位。犬や防犯カメラを上回るプレッシャーを与えることができると言えます。

ただし、補助錠の種類までは特定できていないため、多少の慎重さをもってこのデータを参考にする必要があるでしょう。

また、犬は手なずけることができるため、特段脅威に感じていない空き巣もいます。同様に補助錠も、それ単体ではプロの手にかかれば脅威とはなり得ない可能性もあると考えるべきでしょう。

 

どのくらいの対策をすれば十分なのか?

どのくらいの対策が必要?

では、どのくらいの対策をすれば良いのでしょうか?自宅を要塞にするわけにもいかない以上、ある程度の目安が欲しい所です。

ここでは参考としてお勧めの目安を、2つご紹介します。

 

防犯性能の高い建物部品を参考にする

目安の1つが、「防犯性能の高い建物部品」の認定項目を満たす方法。

引き違い窓の場合は、以下の条件を満たすことで防犯性能が高いと判断されます。

・ロック付きクレセントと補助錠の2点ロック
・防犯ガラスまたは防犯フィルムを使用
・窓枠に外れ止め対策がされている
・窓の合わさる部分が針金などを通さない構造になっている

 

この項目を満たした窓がメーカーから販売される場合、「防犯性能の高い建物部品」としての箔を付けることができます。一般的には下の画像のようにCPマーク(Crime Prevention)が貼りつけられて、その防犯性能の高さを保証します。

CPマーク

画像引用:サッシ.net

防犯性能が高いと判断する基準は、道具を使っても5分以内に侵入できないこと。5分以上かかると空き巣の7割があきらめるというデータに基づいています。

認定の際は、実際に試験員が道具を使って侵入を試みる試験を行います。「防犯性能の高い建物部品」は、かなりの信頼性のある建物部品と言えるでしょう。

サッシやガラスを、これらの部品に完全にリフォームしてしまえば完璧です。しかし費用がかさむため難しい場合もあるかと思います。

 

DIYで対策するなら以下の3点を満たしておくのがお勧めです。

・ロック付きクレセントへの交換
・補助錠の追加
・防犯フィルムをガラス全体に貼り付ける

 

これで、「防犯性能の高い建物部品」に近い防犯性能を手に入れることが可能となります。

 

防犯モデルマンションを参考にする

もう1つの目安は、防犯性能が高いマンションに対してお墨付きを与える「防犯モデルマンション」制度です。

こちらの制度でも、窓について満たすべき項目を参考にすることで防犯性能を高めることが可能となります。

部品単位で見る「防犯性能の高い建物部品」制度よりも、住戸の窓全体を広い視野で見た制度であるため、トータルな防犯対策には役立つでしょう。

以下が窓についての項目です。

 ・接地階および共用廊下に面する窓は、ロック付きクレセントや防犯ガラスまたは防犯フィルムによる破壊対策が必須
・バルコニーに面した窓について、侵入が想定される階においては、ロック付きクレセントと補助錠による2点ロック、さらに防犯ガラスが望ましい(侵入が想定される階とは、接地階、接地階の直上階、屋上の直下階等のことを言う)
・出入に用いない窓の場合、面格子を設ける
・短辺20cm未満の窓は侵入の恐れのない窓として扱い、防犯対策は必須ではない

 

多少あいまいな表現が多いように感じられたかもしれませんね。これは、都道府県によって基準が微妙に異なり、かつ現場を見て判断されるものであるためです。

例えば、侵入が想定されるバルコニーは付近の建物の状況によっても変わってきます。隣の建物の非常階段から飛び移ることが可能ならば、そこが何階であろうと侵入が想定されると判断できます。

とはいえ基本的に「防犯性能の高い建物部品」と同じ窓やサッシであれば満たすことのできる基準がほとんどです。かつ、出入に使用することのない窓は面格子などで保護することで、トータルな防犯性能の向上も視野に入れています。

自治体によっては、バルコニーの窓には侵入警報装置の設置を推奨している所もあります。

空き巣にとってバルコニーは、いったん身を隠してしまえば外から見えづらく、ゆっくり作業ができてしまう場所です。そのため、いっそうの警戒が必要とされているのです。

 

まとめ

クレセント錠は、空き巣の手口が巧妙化した現在では防犯効果が期待できません。

本来ならば窓自体を「防犯性能の高い建物部品」として登録されたものに取り替えてしまう方法が理想ですが、その登録基準にならって以下のポイントを対策すれば防犯効果が高まります。

・ロック付きクレセントと補助錠のダブルロック
・防犯フィルムでガラスを補強

出入りを想定しない窓であれば、面格子を設置しても良いでしょう。

空き巣が好んで侵入経路とする窓。それなのにクレセント錠しかない方は、早めの対策をお勧めします。まずはロック付きクレセントへの交換から始めてはいかがでしょうか。

もはや身近な「バイオメトリクス認証」のメリットと課題に迫る

バイオメトリクスのメリットと課題

「セキュリティ向上にバイオメトリクス認証を検討している」
「しかしどんなメリットがあるのかわからない」

 そんな悩みにお答えします。

もちろん、「バイオメトリクス認証って何?」
という素朴な疑問も解決できるよう、広く解説しました。

いまやバイオメトリクス認証は中小企業や一般家庭にも浸透しています。小型化と低価格化により、これからもさらに普及するでしょう。

正しく運用できれば、利便性向上だけではなく企業の情報管理能力やセキュリティーの高さをアピールすることにも繋がります。

身近なものとなるならば、知らないままではいられません。今回は様々なバイオメトリクス認証の種類やメリット、課題をご紹介します。

バイオメトリクス認証とは何か

バイオメトリクス認証とは何か

 

バイオメトリクス(Biometrics)認証は、日本語では生体認証と言います。

個人の体から得られるデータで、個人の識別を行う認証方式です。

利用されるデータの例を以下に挙げます。

 

・身体的特徴

 指紋、静脈、顔、虹彩、網膜、耳介

 

・行動的特徴

 音声、筆跡、歩行パターン

 

その他、キーストローク(タイピング)や指先の汗腺分布、体臭も実用化に向けた研究が行われています。

バイオメトリクス認証の大きなメリットの1つが、紛失や忘却の心配がないこと。また、本人だけが持つ特徴であるため「なりすまし」の予防効果もあります。

バイオメトリクス認証のルーツは犯罪捜査の指紋採取にあります。
1960年代には自動で認識するバイオメトリクスの研究が始ました。

2001年以降、アメリ同時多発テロによる出入国管理の強化の向きを受けて、バイオメトリクス認証はその重要性を認められてきました。

そして近年の日本でも、バイオメトリクス認証の市場が拡大し続けています。

富士経済によるバイオメトリクス市場動向

引用:富士経済グループ「セキュリティ関連の機器・システム、サービスの国内市場を調査 」

 富士経済グループによると、2020年開催予定の東京オリンピック(延期となりましたが)をきっかけとして導入費用の低価格化が進むと予想され、さらなる市場拡大が期待されています。

 

バイオメトリクス認証が使われている主な例

バイオメトリクス認証の例

 

・マンション

一部のマンションでは、指紋や静脈などのバイオメトリクス認証がオートロックと組み合わせて使用されています。都市部での生活の場合は特に、セキュリティが厳重であることは一定のアドバンテージとなるでしょう。

 

・PC、スマホなどの端末

 ロック解除や本人確認に指紋・顔・虹彩認証を利用できる機種があります。顔と虹彩の認証は、カメラの性能が高まることで実現可能となりました。

 

・入出管理

オフィスの出入り口や特定の部屋の扉に、バイオメトリクス認証が使用されることがあります。一部の従業員だけが情報を登録することで、重要な機密情報を管理する部屋を作ることも可能です。

 

東京ディズニーランドの顔認証

2019年から、年間パスポートの本人確認に顔認証システムが使用されています。キャストによる確認の手間がなくなり、混雑緩和に貢献しています。

 

もはやバイオメトリクス認証は重要施設だけのものではありません。私たちの生活に密着するものとして、姿を見せるようになりました。

 

バイオメトリクス認証のメリットと課題

メリットと課題

 

ここではバイオメトリクス認証のメリットだけではなく、課題もご紹介します。

代表的な認証方式を6種類挙げますが、いずれのシステムにもクリアすべき課題があるのが現状。

適材適所で正しく運用する必要があります。

 

・①指紋

どのバイオメトリクスにも言えますが、同一のものがない事、生涯を通して普遍であることは必須の条件です。

指紋はこの唯一性と永続性に優れており、古くからの実績に培われてきた高い識別性能がメリットです。機器も比較的安価な部類である点も一目置けるでしょう。

しかし、仕事などにより指先がひどく荒れている人は利用できないこともあります。また、ケガによって一時的に認証に利用できなくなる事態も想定しておかなければいけません。

一般的には、左右で1指ずつ登録しておくことで指先のトラブルに対応できる体制を取ります。

 

・②静脈

指先や手のひらの静脈の走り方も、指紋と同様に唯一性と永続性に優れた情報です。

認証時の接触面積が小さい、または非接触であるため、不特定多数の人が利用するATMなどでも心理的抵抗感が少なく済むというメリットもあります。識別のためにかかる時間が短いこともユーザビリティに寄与するでしょう。

静脈認証イメージ

引用:富士通フロンテック「手のひら静脈認証とは 期待される活用分野」

外部から見えない情報であることも大きなメリット。指紋が他人に採取されてしまう可能性を孕んでいるのに対し、静脈パターンは偽造されにくく信頼性は非常に高いと言えます。

静脈認証は各国で幅広く活用されており、モバイル型の読み取り装置が保険営業端末に利用されるなど、着実に身近な存在となっています。

デメリットは、血管などの病変や変化に影響を受けてしまうことです。極端な寒暖差や、血中のヘモグロビン値が大きく低下する貧血症の場合は認証がうまくいかないこともあり得ます。

変化の影響が出やすいのは指先。確実性を求めるなら手のひらの認証が好ましいです。

 

・③顔

カメラの認識技術向上により、あらかじめ登録した人の顔を認証に使うことができます。

顔認識の最大の特徴は非接触性と言えるでしょう。距離が離れていても、カメラが自動的に認識することが可能です。端末に近づくだけで認識できるため、両手が塞がっていても、歩きながらでも認証が済むという便利さがあります。

空港など重要施設での国際犯罪者の検知、老人ホームで徘徊癖を持つ方の外出の検知など、入出管理以外にも活用されている例があります。

youtu.be

動画内にもあるように、「職員の負担軽減」「ウォークスルーのため利用者の手間にならない」という大きなメリットも特徴です。

ただし、非接触性はプライバシー上の問題を抱えているのも事実。本人の同意なくカメラで認識できるため、公共の場所での利用にはデータの利用目的を明確にしなくてはいけません。

気になる認識率ですが、カメラによる認証であるために照明環境やサングラス、マスクのような変化に弱い面があります。ノーマルな環境でも虹彩などに比べると認識率が低い傾向にありましたが、改善されつつあると言われています。

 

・④虹彩

虹彩とは眼球内にある円盤状の膜のこと。カメラの絞りのような機能を持つ組織です。認証には虹彩にあるしわのパターンが利用されます。

虹彩は生涯変わらず、パターンが極めて複雑であることから高い認識率を誇っています。認識時に環境の影響を受けにくく、充血や白内障視覚障害など目のトラブルの多くは虹彩に影響を与えません。

接触かつ高い認証制度により、ICパスポートに登録可能な情報の1つになりつつあります。なお、顔画像はICパスポートにおける必須の生体情報となっています。

その他、マンションの入出管理にも活用される例もあり、生活に浸透しつつあるバイオメトリクスと言えるでしょう。

しかし、認証端末は比較的高価な部類になります。

 

・⑤網膜

眼球の最奥にある網膜の血管分布を生体情報とする方式です。

静脈認証と同様に、表面に露出していない情報なので偽造困難でかつ不変というメリットを持ちます。

白内障などの目の病変によって影響を受けてしまう可能性がある点はデメリットと言えます。

その高い認証精度から、CIAやFBI、NASAで採用されたことがある認証方式です。

 

・⑥行動的特徴

 筆跡や音声がわかりやすい例でしょう。能動的な書字動作や発声の「くせ」を解析し、本人確認のキーとする方式です。

行動的特徴における課題は、認証精度の向上と言えます。テクノロジーの発達に伴い、本人の識別率は向上しているのですが、虹彩のようなバイオメトリクス認証に比べれば失敗する可能性は高くなります。

また、意図的に動作を変えることができてしまうのも行動的特徴の脆弱性の1つです。他人が本人になりすますことは困難ですが、本人が本人ではないように振舞うことは十分に可能です。

つまり、キーとしての認証にはさほど支障ありませんが、犯罪捜査のように本人と認証されることが不利益となる場合には回避されてしまうおそれがあることを意味します。

 

FAR、FRRとは?バイオメトリクス認証の精度

バイオメトリクス認証の精度

 

通常、バイオメトリクス認証においては100%の一致を求めることはできません。生体を扱う以上、パスワードのような「完全一致」は最初から期待できない性質があります。

「完全一致」ではなく「ある程度の一致」で認証成功とする以上、ついて回るのがFAR(誤受入率)とFRR(誤拒否率)です。

FAR(誤受入率)とは

「私は○○です」という要求(クレームと呼びます)を誤って受け入れてしまう確率のことをFAR:False Acceptance Rate(誤受入率)と言います。登録されていない他者が認証に成功してしまう危険性を意味するものです。

「他人受入率」と訳されることもありますが、要求(クレーム)は本人による新規登録の場合も含めます。本人を誤って新規データとして登録できてしまうケースも勘案すると、厳密には「他人」との表現は適切ではありません。

FRR(誤拒否率)とは

要求(クレーム)を誤って拒否してしまう確率のことをFRR:False Rejection Rate(誤拒否率)と言います。登録済みの本人であるのに拒否されてしまう、新規登録したいのに新規データとみなしてくれない場合のことです。

こちらも「本人拒否率」と訳されることがありますが、新規登録の際のエラーも含むことから適切ではありません。

FARとFRRのバランス

 登録されたデータと、現在認証しようとしている生体がどの程度一致しているのか。

その許容範囲を狭くするとFRR(誤拒否率)が高くなります。かといって許容範囲を大きくするとFAR(誤受入率)が高くなるため、セキュリティとしての要求に応えることができません。

技術の進歩によって認識精度は高まってはいますが、このFRRとFARのせめぎあいはバイオメトリクス認証の永遠の課題と言えるでしょう。

精度を高めるマルチモーダル生体認証

100%の認証精度の実現は現実的でないため、複数の生体情報を併用して本人確認をする手法で確実性を高める方法がとられるケースがあります。この確認手法は、マルチモーダル生体認証と呼ばれています。

例えばICパスポートに顔だけではなく虹彩情報も登録する場合がありますが、これもマルチモーダル生体認証の1例です。

マルチモーダル生体認証の場合、本人確認のためには数種類の判定方法があります。

複数の生体認証全てをクリアした場合のみ本人とする方式、それぞれの生体認証の一致度を総合的に計算して本人を識別する方式など、認証装置のメーカーによって工夫がなされています。

 

 バイオメトリクス認証の市場動向

市場動向

 

日本でのバイオメトリクス認証市場は拡大傾向にあると前述しましたが、ここでは世界的にはどう推移していくのか、またどんな用途の需要が高いのかをご紹介します。

世界的にも基本的には拡大傾向が予想されている

ICパスポートの導入、テロの増加やインターネット決済の多様化に伴い、より確実な認証方法が求められています。世界全体で見ても、バイオメトリクス認証の市場は拡大していくとの調査があります。

インフラが整っていない国で市場拡大していく

今後の動向を地域別に見てみると、北米やヨーロッパでは現在の規模が大きい代わりに成長性は低いとされています。これから大きな成長を期待されているのはアジアや南米との見方が強いです。

指紋、顔、虹彩の3つの認証が高い需要を持つ

指紋、顔、虹彩認証はいずれもモバイル端末での認証が進んでいます。さらにこの3つは組み合わせることでさらに認証精度を高めることができます。現在でも金融機関などで積極的に採用されていることから、その信頼性は折り紙付きと言えるでしょう。

 時間的、金銭的コストから導入がためらわれることも

生体情報を取り扱う以上、バイオメトリクス認証を導入するには高い情報管理能力が必要とされます。また、定期的なシステム更新の必要性や導入コストの高さからも敬遠される一因です。

登録データが万一流出した場合、唯一不変な生体情報は直接本人を特定できるデータとして世に出てしまいます。同様の意味で、登録データの流用も基本的にはかなりの危険を伴います。

また、日々の運用においても手間が予想されます。例えばオフィスの出入管理の場合、社員が入れ替わるたびにデータを追加・削除しなくてはいけません。認識がうまくいかない時の対処方法も心得ておく必要があります。

従来のパスワード方式のほうがコスト面では優れており、あえてバイオメトリクス認証を採用しないケースも多いのが現状です。

※参考:Inkwood Research「GLOBAL BIOMETRICS MARKET FORECAST 2018-2026」

 

 まとめ

バイオメトリクス認証は従来のパスワード認証に比べて、盗まれにくい、紛失の可能性がほぼないという大きなメリットがあります。認証時の手間も少なく、軽く触れる、部位をかざす、ウォークスルー等の手段で認証可能です。種類によっては手を使わず、立ち止まらずに認証を済ませることもできます。

しかし、生体情報の不変性によるデメリットも併せ持ちます。万が一データを盗まれた場合、他の個人情報までダイレクトに到達されてしまう恐れもあるでしょう。まめなデータの維持管理と更新、さらに不具合が生じた場合の対処も必要とされます。

それでも「徹底したセキュリティや利便性を追求したい」、そんな場合はバイオメトリクス認証の導入をお勧めします。

防犯ブザーで子供を守る。付け方だけでは解決しない問題も!?

防犯ブザーの付け方、使い方

 

 「防犯ブザーを付ける正しい位置はどこ?」

この記事では、そんな疑問にお答えします。
…が、実はこれだけではあまりに不十分なのです。

「防犯ブザーを使える子供にする方法」

についても解説させていただきす。

ある調査によれば、有事の際に防犯ブザーを使えた子供は驚くほど少数。ほとんどの子供は助けを呼ぶことができませんでした。

大人となった皆さまにも、大切な時に声が挙げられなかった経験はありませんか?

防犯ブザーを渡されただけでは、子供は自分を守れません。

不審者から子供を守る方法の1つ、防犯ブザーについてまるごと知っておきましょう。
 

防犯ブザー、子供は使えているの?驚愕の実態

注意!


危険に遭遇した時、防犯ブザーを鳴らした子供はわずか2%。

これは2007~2008年に、全国の小学生を対象とした調査(※1)の結果です。

遭遇した危険には、不審者に声をかけられた、追いかけられた、車に乗せられそうになった等の出来事を含んでいます。

防犯ブザーが「飾り」となっている事実がうかがい知れます。

いざという時に使いやすい位置に防犯ブザーを付けることと、防犯ブザーに頼る勇気をつくってあげることが必要不可欠です。

(※1 清永賢二(監).「犯罪からの子供の安全を科学する」.ミネルヴァ書房.2012.p-35)

防犯ブザーの正しい付け方・選び方、6つのポイント

6つのポイント


次に、防犯ブザーの付け方のポイントを6つ解説します。

首から下げていないでしょうか?
ランドセルの横に付けてはいないでしょうか?

状況によっては防犯ブザーに手が届かなくなる危険性もあるのです。

①防犯ブザーを付ける場所

ズボンのベルトの高さがベスト。だいたい肘と同じか少し下くらいの高さです。

防犯ブザーはランドセルの肩紐につけやすく、ランドセル側にも肩紐にアタッチメントがある場合があります。

しかし、不審者に抱きつかれた場合を考えると危険です。

抱きつかれると肘よりも上の高さまで手を伸ばすことは困難になります。これでは防犯ブザーを鳴らしたくても鳴らせません。

よって、肘と同じくらいの高さがベストとなります。

利き手も考慮しましょう。子供と相談して使いやすい位置を決めるのも有効です。

②ひもの長さ

では防犯ブザーのひもを長くして位置を調整するのはどうでしょうか?ちょっとした危険がここに隠れています。

結論から言いますと、ひもは長くないほうが良いです。

子供が走って逃げる時、長いひもが揺れて防犯ブザーを掴みにくくなってしまう可能性があります。

緊張状態で冷静になれるかも疑わしい状況。そんな中で、ひもの揺れは非常に扱いづらいものです。

子供が走りながらでも防犯ブザーを掴めるくらいに調整しましょう。

③防犯ブザーの音量

音量は90 dB(デシベル)以上が好ましいです。

90 dBは、だいたい犬の鳴き声と同じとされています。主観的に「うるさい」と感じるには十分な音量と言えます。

しかし電車が通るガード下は100 dB。状況を選ばない音量ではない点に注意しましょう。

ちなみに自動車のクラクションも100 dB。ブザーで周辺住民に危機を知らせるには、最低限90 dBは必要です。

④目立つ場所、目立つ色でアピールできるか

防犯ブザーには、不審者に対する抑止効果もあります。

できるだけ見えやすい位置に、目立つ色の防犯ブザーを付けるようにしましょう。

とはいえ子供が気に入らないデザインでは、積極的に付けてくれないかもしれません。できることなら子供と相談したいポイントです。

⑤電池切れしてないか

しばらく使わないうちに電池が切れていた、なんてこともあります。

子供が遊んでいるうちに、防犯ブザーが衝撃で壊れている可能性も考慮しなくてはいけません。

定期的な動作確認を徹底しましょう。

特に、購入時に入っている電池には注意しましょう。基本的にテスト用の電池が使われているため、本来よりも早く電池切れを起こす可能性があります。

⑥2つあるとさらに安全

ランドセルに防犯ブザーを付けた場合には特に意識すると良いポイントです。

帰宅した子供がランドセルを置いて遊びに行く時、防犯ブザーを付け替えて出かけるのを面倒に感じるかもしれません。

下校時よりも暗くなりがちな夕方は、危険が増す時間帯。遊びに出かける時にも、防犯ブザーをしっかり付けていきたいところです。

以上の6つのポイントに配慮すれば、子供が効果的に防犯ブザーを使える状況が揃います。あとは、子供に防犯ブザーを使う勇気を授けましょう。

 

防犯ブザーを使える子供にするための方法

子供を守る

なぜ子供は防犯ブザーを鳴らせないのでしょうか?

多くの場合、「自分の判断が間違っているかもしれない」という心理が判断を鈍らせます。

不審者は必ずしも敵対的な態度で近づいてくる訳ではありません。

むしろ厄介なことに、面識のある人が危害を加えてくるケースも少なくはないのです。これは性犯罪で顕著な特徴です。

防犯ブザーを使える子供にするには、

①危ない大人がいること
②間違いだったら謝ればいいこと
③鳴らすとどうなるのか

この3つについて知ってもらうことが大切です。

1つずつ、見ていきましょう。

①危ない大人がいることを知ってもらう

 子供を狙う、危ない大人がいるのは事実です。しかし子供にはどんな大人が危ないのかわかりません。

どういう大人が危ないのか、子供に教える必要があります。

「こんな大人は危ない」。その主な特徴は以下の通り。

・しつこく近づいてくる
・電話番号、名前、家をしつこく聞いてくる
・人気のない場所へ誘ってくる

こんな大人は危ない可能性があります。たとえ知り合いでも、実は危険かもしれないことをしっかりと覚えてもらいましょう。

②間違いだったら謝ればいいことを知ってもらう

子供が恐れるのは、自分の間違いでブザーを鳴らしてしまうこと。不審者に対して、本当に鳴らすべき相手かどうかが計りきれないのです。

「間違っていたら、誤れば許してくれる」「何よりも自分の命を優先し、自信をもって鳴らして欲しい」

間違いは誰にでもあり得ることを知ってもらい、鳴らす勇気を持ってもらいましょう。

③鳴らすとどうなるのかを知ってもらう

防犯ブザーの音が怖くて、鳴らしたことがないご家庭もあるかもしれません。

出来れば、鳴らしても構わない場所でブザーを鳴らす練習をしておきましょう。一連の動作の練習にもなります。

先ほどもご説明した通り、防犯ブザーはかなりの音量で鳴ります。いざと言う時、鳴らした子供が驚いてパニックになるかもしれません。

チェックしておきたいポイント

・どうすればブザーが鳴るのか
・どんな音が鳴るのか
・どうやって止めるのか


また、定期的な練習は電池切れのチェックにもなります。

 

まとめ

防犯ブザーには適切な位置があります。

  • 子供が抱き着かれても掴めるように、肘と同じ高さ
  • 走っていても大きく揺れない程度のひもの長さ

また、選ぶ際のポイントは

  • 90 dB以上
  • 目立つ色

そして定期的な動作チェックが大切です。

ほとんどの子供は危険な目にあっても防犯ブザーを鳴らせていません。

「危険を感じたら鳴らしていいんだよ」
「しつこく付きまとう大人は危ないよ」

といった事を子供と話しておくと、防犯ブザーを鳴らす勇気につながります。

防犯ブザーについて、子供とあらためてお話ししてみてはいかがでしょうか。