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3タイプの体格から犯罪傾向を見抜く方法、クレッチマーの『体格と性格』

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ドイツの精神科医、エルンスト・クレッチメルが1955年に著した『体格と性格』。

その内容は多くの示唆に富んでいるのですが、あえて一言で説明するなら「人の体格と気質には相関関係がある」というものです。(気質=性格の卵と解釈して良い)

気質が分かれば自ずと犯罪傾向も決まってくる。クレッチメルは体格と犯罪についても多くの研究を行いました。

この記事ではクレッチメルが研究した、3タイプの「体格ー気質ー犯罪傾向」について見ていきます。

3つの体格の見分け方

細長型

全体的に長さの成長は劣っていないが、厚さの成長がわずかである。これは顔面や体幹、四肢、血管等循環器にも及ぶ。結果、体重や胸囲、幅は平均以下となる。

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画像引用:エルンスト・クレッチメル「体格と性格」.相場均 訳(1971).文光堂

具体的には以下の特徴を持つ。

・胸郭(肋骨で囲まれた部位)は長く、狭く、扁平
・胸囲が臀囲に対して劣っている
・時に広い肩幅をもつが、肩の骨は非常にきゃしゃである
・手の周囲は3タイプの中で最も細い
・皮膚は乾いて血液の分布が悪い

これら体格の特徴は栄養状態によって変わり得るのではないか?という疑問が当然生じます。しかしクレッチメルは以下の文でそれを否定。

こういう人々は農夫になって力の要る肉体労働をすることはできるけども、筋肉がきたえられてその周囲が増す度合いはほんの僅かである。彼等に最善の栄養を供給しても、否平和時代に多くの養老院の老人たちのように存分食事をとらせても、彼らはやはりもとの通りにやせたままなのである。
エルンスト・クレッチメル「体格と性格」.相場均 訳(1971).文光堂

さらに頭部や顔面についての言及も。

・頭蓋周囲が小さい
・皮膚色は蒼白
・彫が深く、筋張った長い鼻をもつ
・下顎はあまり発達していない

細長型は乾いた皮膚や皮下脂肪の少なさから、比較的早老に見えやすいとも言われています。また、細長型の特徴が顕著な例をクレッチメルは「無力型」とも表現しています。

闘士型

広い肩幅と立派な胸郭を有し、適度または過度に発達した筋が体の輪郭を描く。分厚く頑強な胴体は、時に人並み以上の下半身をさえ細く見せかけることがある。

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画像引用:エルンスト・クレッチメル「体格と性格」.相場均 訳(1971).文光堂

具体的には以下の特徴を持つ。

・特に鎖骨、手足の関節、手の骨格が太い
・肩甲骨、四肢の強い発達
・頸部~肩へのラインが僧帽筋によって独特な斜面を描く
・皮膚は張りが良く弾力的で引き締まっている
・身長は大体において高い

闘士型は筋肉が発達しやすい年齢のことを指すのではないか?という問いが浮かぶかもしれません。こちらも素質によるものであるとのクレッチメルの文章を引用しましょう。

闘士型は18才の思春期からすでにはっきりと特徴を示し、25才すぎて体が成熟するにつれていよいよ明瞭にそして著しくなる。多くの例では50才になってもまだ相変わらずこの型をはっきり認めることができる。(中略)中年の痴呆化した緊張病入院患者は、(中略)筋肉系は著しく衰え、元のようにもりあがりの見られないこともしばしばであるが、がっしりした骨格や体全体の規模から、以前は大そう頑丈な発達をしていたことがうかがわれる。
エルンスト・クレッチメル「体格と性格」.相場均 訳(1971).文光堂

闘士型の頭部顔面にも特徴があります。

・頭蓋の形は平均して高く幅狭い
・顔面の位置は高い
・高く突出した下顎
・皮膚は汚れていて、時に茶色っぽい

闘士型についてクレッチメルは、繰り返し皮膚の分厚さ、肩周囲の骨の頑強さをとり上げています。おそらくその理由は、いくらか肩幅の広い細長型が筋肉をつけると闘士型のように見えることがあるからでしょう。純粋に筋肉量のみで判断しようとすると、鍛えた細長型と闘士型は似ていることがしばしばあります。

なお、闘士型は3タイプの中で比較的少数です。

肥満型

ずんぐりとした印象。両肩の間に短く太い頸部があり、胸部の下には大きな脂肪腹が膨れ出ている。

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画像引用:エルンスト・クレッチメル「体格と性格」.相場均 訳(1971).文光堂

具体的には以下の特徴を持つ。

・適度な肩幅に比して大きな胸囲をもつ
・胴体は闘士型のような広さはなく厚さがある
・膨らんだ胸部に押されるように肩が斜め上にずり上がっている
・四肢は平均して短く、時には細い
・身長は中位、筋肉も中位
・皮膚の厚さも細長型と闘士型の中位

肥満といえば脂肪が多いというイメージがあるかもしれません。しかしクレッチメルの言う肥満型は必ずしも脂肪沈着が必須ではなく、胸部、肩、首の比率が重要な鑑別項目とされています。特筆すべきは闘士型よりも短い肩幅を持つものの、胸囲では勝る点です。

肥満型の顔面特徴は以下の通り。

・頭蓋は大きく丸く幅広いが高さはない
・正面から見ると五角形のように見える
・皮膚を通して毛細血管が見え、頬や鼻が赤みがかっている
・脂肪は豊かだが鼻、頬骨、下あごの輪郭が消失することはない

頭部顔面においても脂肪の沈着のみで肥満型と判断することは控えるよう注意が促されています。内分泌系の機能異常に伴う、過度の脂肪沈着を呈す人との鑑別のためです。これらの疾患的ともいえる人々は肥満型に分類されません。

女性の場合

クレッチメルは、女性は筋肉や脂肪の発達という点から特徴が不鮮明であるとしています。

男性よりも身長が小さいこと、胸部と臀部に脂肪がつきやすいこと等により、男性の場合より差異を見出しにくいという意味で鑑別に困難さが伴います。とはいえ、おおむね各タイプの特徴は女性にも同様に現れるとしています。

細長型の気質と犯罪

細長型は感性に対し鈍感で思考優位な気質を持つ。しかしその対極である精神的な敏感さや豊富な内的精神世界を持つ一面もあり、無味乾燥のように見えて実のところ深く傷ついていたりする。

犯罪の傾向

彼らの冷淡で閉ざされた心の窓は、犯罪傾向を持つ場合、かたくなで矯正の難しい犯罪経歴をたどらせる。

犯罪活動は20才以前に始められ、窃盗や詐欺が中心を占める。暴力的犯罪は少ない傾向にあり、これが類似の早発犯罪傾向を有する闘士型との大きな差異を生み出している。

犯行の特徴は、犯行にかけるコストと得られる利益の不釣り合いである。細長型の内面世界から発動する犯行は、およそ他人には理解できないものとなることもある。緻密で計画的な犯行から得たものが、非常に大したものではないこともあるという。

闘士型の気質と犯罪

闘士型は粘り強い気質を特徴とする。動作が控えめで注意と忍耐が持続するが、瞬発力というものが欠けている。クレッチメルに言わせると、この粘着性は成功のチャンスを得るには妨げとなり、結果、潜在的劣等感を導くことがあるという。

闘士型も対極に揺れ動く時があり、攻撃的ともいえる爆発力を発揮することがある。

犯罪の傾向

闘士型は細長型と似て20才前に犯罪活動が盛んになる。成人以降やや落ち着きを示すが、更年期(42~46才)で突如爆発的に犯罪活動が活発化。それを過ぎると再び急激に落ち着く。

闘士型は犯罪との関連には不明な点が多い。それでもなお爆発力に基づく暴力的犯罪や性犯罪が多いことが指摘されている。基本的には歯向かう者をかたっぱしから切ったり刺したり、制圧されるまで獰猛な獣のように振舞うという。

肥満型の気質と犯罪

肥満型は陽気と憂鬱を忙しく行き来する。基本的には社交的で物事に楽しさを見出すことが上手く、そして行動的でもある。しかし思慮の浅さや無遠慮さが目立つ一面も。それでも彼らは人を愛することに長けているとクレッチメルは言う。

犯罪の傾向

社交的で情け深いその性質は、犯罪初犯年齢の遅さと高い更生能力としてあらわれる。そもそもにおいて犯罪性は少なく、累犯性(何度も罪を犯すこと)も認められない傾向にある。

彼らは男性の更年期とも重なる40~50才で、人生において数少ない犯罪に手を染めることがある。その多くは詐欺罪とされており、かなり少ないが暴力犯罪に至ることもある。

最後に

クレッチメルの時代は、科学の分野で人をいくつかのタイプに分ける「類型論」が流行っていた時期と言えます。類型論の弱点は、純粋にそのタイプに属する人間はほとんどいないことです。

ただクレッチメルもこの点は了解済みで、ほとんどの人間は諸要素が混合したり中間地点にいると明言しています。

「体格と性格」には、このほか体格と精神病や内分泌との関連、筆跡との関連、さらには天才との関連についてまであらゆる人間の特質を網羅しています。この時代の研究者は天才というものが大好きです。

とても面白いので機会があればもっと詳細を述べたいと思います。

興味がある方は古本で探してみてはいかがでしょうか。

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