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防犯、事件、犯罪心理について

【事件現場レポート】港区麻布永坂町のオークション出品者襲撃事件

麻布の風景

2021年1月9日、東京タワーを望むハイセンスな都市、麻布にて変わった事件が発生しました。

その事件とは、ネットオークション出品者が待ち合わせの場所で男2人にハンマーで襲われ、高級腕時計などが入ったバッグを強奪されたというもの。

待ち合わせ場所が舞台となった以上、「なぜその場所を選んだのか」に犯人の意図が見えてくるはず。

実際に現場に足を運び、感じたことをここに書き留めます。

事件の詳細

日時:2021年1月9日、18時30分ごろ
場所:港区麻布永坂町「マンスリータイムズ麻布永坂町

手口
ネットオークション出品者の男性が上記の場所で待ち合わせていると、男2人にハンマーで襲撃された。男性は軽傷を負い、高級腕時計などが入ったバッグを奪われる。争う声を聞いた住民が110番して事件が発覚した。

犯人の特徴:不明。1/17日現在逃走中。

事件現場の様子

現場の人通り、見通しの具合

事現場
襲撃の舞台となった「マンスリータイムズ麻布永坂町」。麻布の中でも永坂町は下町としての雰囲気を感じさせます。住宅に囲まれた駐車場は大通りから隔絶された所にあり、日中でも散歩している住民がときおり通る程度でした。

事件現場周囲に誰一人いないタイミングを見つけるのは簡単でしょう。

なお筆者が訪れたのは土曜日で、事件が発生したのも土曜日。天気も共に晴れです。事件当日も同様の光景だったのではないでしょうか。

防犯カメラの数

確認できた範囲では、駐車場の防犯カメラが3台。駐車した車のナンバーや人相がわかりそうなカメラと、場内を一望できるカメラ両方を備えているように見えます。

駐車場内を一望できるアングル

ある防犯カメラ付近から撮影した光景。場内での犯行の一部始終は、きっと記録されているはずです。

18時30分の様子

事件が起きたのは18時30分。暗くなれば状況は一変しうるため、事件発生と同じ時間まで待機して撮影しました。

駐車場正面(夜)

現場となった駐車場は照明で照らされ、住宅地のなかで目立つ存在となっていました。場内の奥には光が届かない場所がありましたが、あえて隅の暗がりに行かない限りは人の服装程度なら把握できる状況です。近づけば顔も見えるでしょう。

もし犯人が知人なら気づくことも可能、そう感じました。

人通りは昼よりさらに少なく、仕事帰りとみられる人もあまりここは通らない様子。明らかに「見つかりにくい」環境が出来上がります。

ちなみに筆者が撮影している横では、住民の親子がボール遊びをしていました。もし事件当日に同じ状況だったら犯人はどうしていたのだろう、と考えずにはいられません。(明らかに私は不審者でしたね…)

逃走経路を歩いて感じたこと

多くの計画犯は、逃走経路を入念に調べます。現場に向かう時にはあくまで一般人でいられますが、現場から逃げる時には犯罪者となっているからです。

3つのルートがある

現場からの逃走経路は3方向に伸びています。まず俯瞰視点で位置関係を示します。

現場の俯瞰イメージ

それぞれのルートに番号を振り、1つずつ見ていきましょう。

・ルート①

北側の大通りに出るルート。

きつい斜面を昇っていくのですが、いち早く大通りに出ることが可能です。誰かに追いかけられていない限りは大通りに出てバスや仲間の車に乗って逃走することが可能でしょう。ハンマーでの襲撃は、被害者を追跡できない状態にする意図も含んでいたかもしれません。

ただ、筆者が通った日には大通りで警察による検問が盛んに行われていました。ロシア大使館を中心に展開されていたので本事件とは無関係と見られますが、当日はどうだったのでしょうか。

・ルート②

西側の住宅街を抜けて大通りに出るルート。こちらもまず急な坂を昇ります。

西側ルート

さらに進むと大通りの手前に駐車できる程度のスペースがあり、逃走用の車を置いておくにはうってつけのルートと考えられます。

西側ルート2

犯人は現場までは徒歩で向かったはず。わざわざ防犯カメラの充実した駐車場に車で入るとは思えません。その上、現場に近づけば近づくほど道路は狭くなり、車一台通るのがやっとです。逃げる途中で対向車と鉢合わせたら目も当てられません。

・ルート③

南側の徒歩専用通路を通り、公園のある住宅街を抜けていくルート。細く入り組んだ道となっており、追跡を撒くならこのルートを選びそうに思えます。

南側ルート

見ての通り車では通れません。この先には住宅街が広がり、途中には公園があります。

南側ルート2

住宅街には分かれ道が多く、入念な下調べなしにこのルートは選べないでしょう。帰路を歩く住民との遭遇率は最も高く、走って逃げていたなら住民には不審に映ったはずです。

住宅街を抜けると交通量の少ない車道に出ます。この車道に逃走用の車を路上駐車しても、短時間ならお咎めはなさそうに見えました。

逃走中の犯人を防犯カメラは捉えられたのか?

住民の防犯意識は高いと見られ、多くの住宅の玄関には防犯カメラが設置されています。しかしいずれも映してるのは自宅の玄関(当たり前ではありますね)。そして自治体による道路監視用のカメラはごく少数でした。

確実に良好なアングルで犯人を撮影できたか、多少不安が残ります。

総括

待ち合わせ場所を提案したのが出品者か犯人側かは不明ですが、双方の合意があったことは確かです。秩序とスマートさのある麻布という街の中で、本事件の犯行現場は1つの暗く狭い「落とし穴」のように感じました。人目に付かず、安全に逃げ切りたい犯人側の意図が透けて見えます。

とはいえ、防犯カメラや住民の目で犯人を追い詰めることは可能。その数は少ないながらも、きっと犯人を捉えることができている。そう信じたいところです。

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