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【用語解説】暗数とは?潜んだ犯罪を見つけ出す方法

暗数とは

犯罪学上の暗数とは、申告されない犯罪のことを指します。

警察庁法務省では国内の犯罪のデータを収集しています。しかし発生した犯罪すべてを把握することは実質不可能。様々な理由で、いくつかの犯罪は統計からもれてしまいます。

例えば、暴力を振るわれても被害者が届け出なければ、それは暗数となります。統計上その犯罪は「なかったこと」になってしまうのです。

社会に数多く潜んでいるであろう暗数。打つ手はないのでしょうか?

方法はあります。暗数が生じやすい犯罪はある程度特定されており、実態を暴こうという試みが既に行われているのです。

暗数が多い犯罪

暗数は窃盗や性犯罪で特に多いとされています。また、強盗も定義的な問題で正確な件数を把握しづらい罪種です。

①窃盗に暗数が多い理由

窃盗の場合、単純に被害に気付いていないケースが想定されます。空き巣の場合でも、数千円のみ抜き取って事件化を防ぐ手法も確認されています。

また、被害額が少ない場合には被害届の手続きが面倒と感じ、結果的に事件化しないこともあるでしょう。

窃盗犯には連続&常習犯が少なくありません。ある事件で窃盗犯を逮捕した場合、余罪全てを追求すれば暗数の減少につながります。しかし余罪を追及するにはそれだけ警察の労力が必要。残念ながら全てを掘り起こさないまま送致するケースもあるようです。

②性犯罪に暗数が多い理由

性犯罪の場合、よく指摘されるのが他人に打ち明けることへの抵抗感です。他には警察による解決が期待できない、加害者からの報復を恐れるといった理由が質問紙から浮かび上がっています。

③強盗事件を把握しづらい理由

強盗は財物を奪う目的において、暴力や脅迫を用い、被害者の反抗が抑圧された場合に成り立つ犯罪です。つまり奪った、傷を負ったという客観的事実の他に、双方の意思という主観的な要素が関わるという複雑さがあります。

主観的なものは個人間や社会の情勢において変化しうる要素です。結果的に、「これは強盗事件である」という判断には多少のぶれが生じやすくなります。

暗数を見つけ出す犯罪被害実態調査(暗数調査)

暗数を暴くには被害者への質問が必要という考えのもと、日本では犯罪被害実態調査(暗数調査)というものが行われています。

これは社会に起きる犯罪を暗数を含めてより正確に推定するために行われるもので、2000年以降4年に1回実施されます。

住民登録制度からランダムに被験者を選び、調査員が訪問して質問紙を使った直接の聞き取りを行うのが主な方法。性的暴行被害に関する質問など一部は被験者自ら記入する形です。

主な質問項目は以下の通り。

犯罪被害の有無
犯罪被害の警察への通報の有無
通報したまたは通報しなかった理由
加害者との関係
犯罪に対する不安
性別、年齢など回答者の属性

これらの回答結果は犯罪白書などの犯罪統計にて公表されます。

なおH31年の調査では、男女各3,000名の計6,000人が被験者として選ばれました。

暗数を暴くと起きる「ある現象」

ここからは多少余談です。

警察の活動方針の変化や法整備などで今まで隠れていた暗数が暴かれると、基本的に犯罪の認知件数が増加します。この統計の表面上の変化が、「治安が悪化した」という文脈で利用されることも少なくありません。

逆に言えば認知件数はあくまで目安に過ぎず、その裏にある社会の動きと合わせて知ることが重要という事になります。

 

あるデータを見る時、常に想定しなければいけない暗数の存在。見逃していたSOSがそこにあるかもしれません。

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