防犯の図書館

防犯設備士がつくる、防犯や犯罪のことがよくわかる図書館

【用語解説】リレーアタックとは?意外な対策アイテムは「缶」

リレーアタックとは

リレーアタックは、自動車盗で用いられる比較的新しい手法です。

車のドアを開錠するためのテクニックで、スマートキー対応車が被害に遭っています。

必要な時間はわずか5秒。すばやい犯行で目の前の愛車が乗り逃げられたというケースも珍しくありません。

その具体的な手口と意外と簡単な対策をお伝えします。

リレーアタックの手口

リレーアタックとは、スマートキー対応車のドアを一瞬で開錠する方法です。

スマートキーからは微弱な電波が出ており、キーの持ち主が近づくことでドアが反応して自動的にドアが開錠します。キーの電波はせいぜい1m程度しか届かなく、キーが遠くにあれば持ち主が近くに居ないと判断されてドアは開錠されません。

このセキュリティを破るのがリレーアタック。

犯行は基本的に2人以上で行われます。1人がキーの持ち主に近づき、中継器という特殊な機械を使ってキーから出ている電波を増幅&中継。車の近くで待機しているもう1人が受信機で電波を受け取り、ドアを開錠してしまうという手口です。

リレーアタックのイメージ

家の中にキーを置いている場合でも、置き場によっては容赦なく電波を拾われ、中継されてしまいます。

かかる時間はおよそ5秒。気づいたときにはもう遅い場合さえあります。そしてエンジンスタートの方式によっては、そのまま電波を利用してエンジンを始動できるのが恐ろしい所です。

 

リレーアタックの事例紹介

実際に起きたリレーアタックによる被害を見てみましょう。

あるドライバーが車の鍵を閉めて店に入ろうとした時、後ろから「ピピッ」とドアの開錠を知らせる電子音が聞こえた。振り向くと知らない人が車に乗り込み、そのまま走り去ってしまった。
参考:FRIDAY 2017年9月22日号
ある民家の防犯カメラに見知らぬ男が映っていた。男がある装置を家の方に向けると、家人の愛車「レクサス」のハザードランプが点灯。車のそばに立つもう1人の人物がすぐさまドアを開けた。車のキーは自宅2階のリビングに置いてあり、車との距離は約10mあったという。
参考:産経新聞 2019年1月30日

この2つの事件は、ともにリレーアタックを用いた犯行でした。犯行はすばやく行われ、気づいたときには手遅れであることがお分かりいただけたと思います。

 

リレーアタックへの対策

一瞬で車を持ち去る恐るべきリレーアタックですが、実のところ対策は簡単です。キーから電波が出ないようにすればよいのです。

①電波遮断ケースにキーを入れる

カー用品店などで販売されている「電波遮断ケース」に入れることで、キーからの電波がシャットアウトされ、中継器でも拾うことが困難になります。

電波遮断ケース
画像引用:ハッピースペース 商品紹介ページ
安いものは1000円程度だが、性能を重視しておきたい

②ブリキなど金属製の缶にキーを入れる

専門用品を買わなくても、家にあるブリキなどの金属製の缶で電波を遮断することができる場合もあります。効果に不安を感じるかもしれませんが、警察から推奨されている方法の1つですので、試す価値は十分にあります。実際に缶にいれたキーを近づけてみて、ドアが開かないかどうか確認すると確実でしょう。

③キーを節電モードにする

キーの種類によっては、電波を出さない「節電モード」に設定できる場合があります。メーカーや商品ごとに設定方法や解除方法が異なるため、説明に目を通しておきましょう。特に解除方法を知っておかないと、いつの間にか解除されていたという事態が起こり得ます。

④その他のカーセキュリティ用品を使う

たとえ開錠されてもハンドル操作ができないように、ステアリングロックを設置するのも1つの手。車庫やカーポートに防犯カメラを設置するなど、駐車場所のセキュリティを高める方法もお勧めです。

ステアリングロック
画像引用:セキュリティラウンジ商品紹介ページ

最善なのは、キーの電波遮断と他のセキュリティを組み合わせること。防犯意識のアピールにもつながります。

 

被害の全容は掴みづらい

件数の把握は困難

リレーアタックは痕跡が残りづらく、被害件数の把握は困難です。総被害件数と車の状態から推測しなくてはいけません。

例えば、2017年の自動車盗の認知件数は1万2千件。このうち7割はキーが無い状態で見つかりました。つまり約7千件は持ち主のキーを必要としない、何らかの方法で持ち去られた可能性が高いことになります。

リレーアタックが認知されるようになったのも2017年あたりのこと。7千件のうち、決して少なくない割合でリレーアタックが使用されていたと考えるべきでしょう。

自動車盗の総件数が激減している現在でも、リレーアタックは健在です。愛知県瀬戸市だけでも2020年1月~9月の間にリレーアタックが使われたとみられる被害が12件発生しています。中日新聞 2020年9月2日より)

お手軽価格の中継装置

リレーアタックがはびこる原因の1つに、装置の安さがあります。

識者によれば、装置の作成は簡単で、しかも2400円程度で作れるとのこと。自作が可能なら販売行為を摘発するなどの対策も困難となり、これからも長く私たちを脅かす存在となるでしょう。

 

進むリレーアタックへの包囲網

お手軽に自動車盗を可能にしてしまうリレーアタック。しかしメーカーや警察も黙っている訳ではありません。

基本的に対処は簡単であるため、警察と損保組合によって、リレーアタックの手口を市民へ周知させる活動が続いています。また、被害件数が多い一部地域では警察署によるブリキ缶の配布、レクサスなど被害に遭いやすい車種のオーナーへのチラシ配布が行われてきました。

カーセキュリティ業界も商品開発に努めています。

カーセキュリティ市場トップシェアの加藤電機は、リレーアタック対策機能をもつセキュリティ連動型ドライブレコーダーを開発しました。車内の録画機能や大音量のサイレン機能など、総合的なカーセキュリティ機能を搭載しています。

加藤電機「HORNET セキュリティレコーダー HSDR300-701」
画像引用:加藤電機 HORNET セキュリティレコーダー HSDR300-701 商品紹介ページ
防犯機能が充実している分、価格は8万円を超える

また、人材サービスのパーソルグループは、従業員の動線解析システムに応用されている測距機能をもとに、高い精度で距離を感知してリレーアタックを防止する技術を提案しています。

 

メーカーによるカーセキュリティの向上と、警察からの広報活動。それに個人でできる簡単な対策が加わることで、リレーアタックによるリスクは大きく減少すると考えられます。

しかし自動車盗は常にシステムの抜け穴をかいくぐってくるものです。未だにイモビカッターが現役で利用されているように、セキュリティの甘さや脆弱点を突いた犯行は後を絶たないでしょう。

イモビカッターについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

blog.bouhanmemo.com

特定のセキュリティ機能だけに頼らない、総合的な防犯設計が重要になるのではないでしょうか。

//